レスポンデント条件づけとは? - 行動分析学

レスポンデント条件づけとはどういうものなのでしょうか?

行動分析学をわかりやすくまとめると、「条件づけに関する学問領域」と言えるかなと思います。なぜなら、行動分析学で行動を見るときに重要になるのが「レスポンデント条件づけ」と「オペラント条件づけ」だからです。

大学などで心理学を学んだ人でも、レスポンデント条件づけという用語はあまり聞いたことがないかもしれません。おそらく、「古典的条件づけ」と言った方がわかると思います。パヴロフの犬で有名な条件づけですね。

では、レスポンデント条件づけがどういうものなのかを見ていきましょう。

レスポンデント条件づけとは?

「パヴロフの犬」で有名なパヴロフ(Pavlov, I. P.)による実験は、餌と音を一緒に提示することで、犬が音に対して唾液を分泌するようになるというものです。これは別の実験をしている最中に偶然観察されたことを実験的に確認したものだそうだそうです。

この現象は「条件反射」と呼ばれていましたが、スキナー(Skinner, B. F.)が「レスポンデント条件づけ」としてまとめました。「レスポンデント」というのはスキナーの造語だそうです。

レスポンデント条件づけを見ていく前に、「レスポンデント行動」を見ていきましょう。

レスポンデント行動とは?

行動分析学では行動を「レスポンデント行動と「オペラント行動」に分けて考えます。「言語行動」という行動もありますが、ややこしくなるのでまずはオペラント行動とレスポンデント行動の2つと考えておくのがいいと思います。

表現からわかるように、「レスポンデント行動」は「レスポンデント条件づけ」と関係していて、「オペラント行動」は「オペラント条件づけ」と関係しています。

レスポンデント行動は、行動に先立つ環境変化によって誘発される行動である

『行動の基礎』 p.47

『行動の基礎』にはこのように説明されています。他にいくつかの本を確認しましたが、レスポンデント行動についてちゃんと説明されているものは見当たりませんでした。

レスポンデント行動は、オペラント行動と比較した方が理解しやすいと思います。『行動の基礎』にあるオペラント行動の定義を見てみます。

オペラント行動は、行動の後の環境変化によってその生起頻度が変化する行動である

『行動の基礎』 p.47

レスポンデント行動は行動の「」にある環境変化によって誘発されるもので、オペラント行動は行動の「」の環境変化によって生起頻度が変わるものということですね。行動を制御しているものが、行動の前にあるのか、行動の後にあるのか、という違いと捉えておくといいかもしれません。

刺激と反応

パヴロフの犬からもわかるように、レスポンデント条件づけは「刺激」と「反応」の関係に関わるものです。餌やベルの音という「刺激」に対して、唾液分泌という「反応」があるわけですからね。

パヴロフの犬の実験は、一般的には「ベルの音」で説明されていますが、実際はメトロノームが使われていて、ベルはデモンストレーションか何かで使ったものらしいです。これを知ったときの衝撃と言ったら。。。

大学などで心理学を学んできた人にとって「刺激」という表現は当たり前のものだと思いますが、それについても少し説明しておこうと思います。心理学辞典(有斐閣)から引用しようと思ったんですが、わかりにくくなりそうだったので『行動分析学』(有斐閣アルマ)から引用します。

今日では、行動には必ず直前の原因があるというのが、ごく当たり前の見方となっている。たとえば反応[response]という言葉は、「何か」についての反応であり、反応に先立つ「何か」があることが言葉のうえで前提となっている。この「何か」は、心理学では刺激[stimulus]と呼ばれ、刺激-反応という対の概念ができあがった。

『行動分析学』(有斐閣アルマ) pp.14-15

「刺激」と「反応」がどういうものかを見たところで、レスポンデント条件づけで出てくる「刺激」と「反応」を見ていきましょう。

無条件刺激と無条件反応

パヴロフの犬では、ベルの音と餌を一緒に提示することで、ベルの音だけでも唾液を分泌するようになることがわかりました。ここで出てくるのは、「ベルの音」(刺激)、「餌」(刺激)、「唾液分泌」(反応)です。

犬に対して餌を提示すると唾液を分泌するというのは自然に起こることです。餌という「刺激」に対して唾液分泌という「反応」が生じると表現することができます。

この「刺激」と「反応」の組み合わせは、生得的なものです。言い方を変えれば、条件づけられたものではないということになります。

そのため、餌と唾液分泌という組み合わせでは、餌が「無条件刺激」(unconditioned stimulus : US)、唾液分泌が「無条件反応」(unconditioned response : UR)となります。

「condition」には「条件づける」という意味があるみたいので、「conditioned」は「条件づけられた」となり、それに「un」を付けることで、「条件づけられていない」という意味になる、という感じでしょうか。

ちなみに、『臨床行動分析のABC』では、無条件刺激には「UCS」、無条件反応には「UCR」という略語が使われています。

条件刺激と条件反応

無条件刺激と無条件反応は生得的なものと捉えれば、比較的わかりやすいと思います。でも、条件刺激と条件反応が出てくると、理解が難しくなってきます。ここで混乱する人も多いと思います。

パヴロフの犬では、餌と一緒にベルの音を提示しています。ベルの音を聞かせるだけでは、犬は唾液を分泌しませんよね。唾液分泌に対して「中立」という意味で、ベルの音は「中立刺激」(neutral stimulus : NS)と呼ばれます。

無条件刺激(US)と中立刺激(NS)を一緒に提示(対提示)することで、反応に変化が見られます。パヴロフの犬で言えば、餌とベルの音を一緒に提示することで、唾液分泌に変化が見られるということです。

その変化は餌という無条件刺激(US)と唾液分泌という無条件反応(UR)に対してではなく、ベルの音という中立刺激(NS)と唾液分泌に対してです。

どんな変化が起こるかというと、パヴロフの犬で知られているように、ベルの音に対して唾液が分泌されるようになります。

ここが少しややこしいのですが、唾液分泌を生じされるようになったベルの音は「条件刺激」(conditioned stimulus : CS)と呼ばれるようになります。

もともと中立だった刺激を条件として、ある反応が誘発されるようになったということで、「条件刺激」という感じですかね。無条件刺激のところでの説明と合わせると、「条件づけられた刺激」となります。

パヴロフの犬で説明すると、唾液分泌に対して中立だった(唾液を分泌させない)ベルの音を聞くという条件下で、唾液を分泌するようになったため、ベルの音が「条件刺激」に変わったという感じだと思います。

さらに、もともと「無条件反応」として登場した唾液分泌ですが、ベルの音という条件刺激に対しては「条件反応」(conditioned response : CR)と呼び方が変わります。

唾液分泌という同じ反応なんですが、どの刺激に対する反応なのかで呼び方が変わるということですね。生得的に反応を誘発する餌(無条件刺激)だと「無条件反応」で、新たに反応を誘発するようになったベルの音(条件刺激)だと「条件反応」となります。「条件づけられた反応」ということですね。

刺激と反応をレスポンデント条件づけとしてまとめる

だんだんややこしくなってきましたね。ここまで出てきた刺激と反応をパヴロフの犬でまとめてみます。

刺激

無条件刺激:餌

中立刺激:ベルの音

条件刺激:ベルの音

反応

無条件反応:唾液分泌

条件反応:唾液分泌

刺激と反応の種類を無視すると、刺激は餌とベルの音の2種類、反応は唾液分泌の1種類となっています。もともとセットだった「餌-唾液分泌」に「ベルの音」という刺激を関連づけているという見方ができますね。

その関連づけは、「ベルの音」に「唾液分泌」という機能を持たせる形で行われています。これをレスポンデント条件づけと呼びます。

図にするとこんな感じですね。刺激と反応の名前が変わるのはわかりにくいところですが、「無条件」同士、「条件」同士でセットになっていると理解するとわかりやすいと思います。

このようなレスポンデント条件づけを言葉で表現するとどのようになるのでしょうか?

レスポンデント条件づけは、ある有機体(生活体)が生活している文脈や環境内に存在する刺激に対し、その時点ではもっていない、生理的に意味のある機能を新たに付与する、というように働きます。言い換えれば、レスポンデント条件づけにより、あらかじめある機能をもっている(あるいはまったくもっていない)何かが、新しい機能を獲得するようになる、ということです。

『臨床行動分析のABC』 p.100

レスポンデント行動の学習をもたらす手続きはレスポンデント条件づけ(respondent conditioning)とよばれている。

『行動の基礎』 p.57

レスポンデント条件づけ:
a)中性刺激が
b)無条件刺激と対提示されることで
c)無条件反応に似た条件反応を誘発し
d)条件刺激に変わる

『行動分析学入門』(産業図書) p.261

3冊の本からレスポンデント条件づけの定義に関するところを引用しました。それぞれにわかりやすさと、わかりにくさがありますよね。

まとめると、レスポンデント条件づけのポイントは次の3点だと思います。

レスポンデント条件づけのポイント
  • 対象となる行動がレスポンデント行動であること
  • その行動が先行する刺激によって誘発されるようになること
  • 先行する刺激はもともとその行動を誘発するものではなかったこと

レスポンデント行動の拡張

レスポンデント行動の学習であるレスポンデント条件づけを見てきましたが、ここでレスポンデント行動の概念を少し拡張するような話題を提供したいと思います。

レスポンデント行動の定義は、行動の前の環境変化によって誘発される行動というものでした。

そうであるなら、ある行動がその行動の前の環境変化で誘発され、後の環境変化で生起頻度が変わるものでなければ、その行動はレスポンデント行動ということになります。

この定義に従えば、レスポンデント行動のイメージが大きく変わると思います。

ある身体変化がレスポンデント行動であるかどうかは、刺激によって誘発されたものであるか、そうでないかという発生原因によって決定されるのであり、その様態、つまりそれが情動反応か認知プロセスか、それが自覚できるものか自覚なしに生じるものか、さらには外部から観察できる身体変化か本人しか知り得ない身体変化(私的出来事)か、などとは別の問題ということである。

『行動の基礎』 p.102

レスポンデント行動は生理的反応や不随意運動と捉えるとわかりやすいんですが、定義上はそういうものではないということですね。

認知行動療法(特に認知療法系)には「自動思考」という概念があります。自動的にパッと浮かぶ思考やイメージのことです。この「自動思考」が何らかの刺激によって誘発され、その思考の後にある環境変化が生起頻度に影響を与えないのであれば、それはレスポンデント行動と呼べるのかもしれません。

1つの刺激が提示されたときにそれに誘発されて、(中略)特定の身体変化が生じたならば、その関係が生得的なものでない限り、それらの身体変化は学習性のレスポンデント行動ということになる。このように刺激によって誘発される身体変化という視点から見るならが、イメージのようないわゆる意識現象もその多くはレスポンデント行動として扱うことができる。

『行動の基礎』 p.102

イメージや思考といった内的な反応、いわゆる認知というものを行動分析学的にどのように扱うかという問題があります。行動分析学は「徹底的行動主義」なので、それらも「行動」として扱うことになります。

認知がどのような行動であるかというと、その一部はレスポンデント行動として理解することができるということです。もちろんそれだけですべてを説明できるわけではないし、オペラント条件づけや関係フレームづけが関係している「認知」もあります。

1つ1つの認知に対して、どの種類の行動であるかを確定していくことは完全にできるものではないと思いますが、レスポンデント行動としての認知というものが存在している可能性は頭の片隅に入れておいた方がよさそうですね。この辺を突き詰めていくと、興味深く、うんざりするくらいややこしいところに向かっていくことになりそうですが。

最後に

レスポンデント条件づけは刺激と反応の条件づけという意味で簡単な概念ですが、詳しく見ていくとややこしくなってくるものという感じがします。パヴロフの犬は簡単ですが、認知などの行動がレスポンデント行動の可能性があったりと、掘り下げていくと大混乱になりそうですね。

ここではレスポンデント条件づけのイメージをつかめるようになることを意識して説明してきました。それが実現できていればいいのですが。。。

最後に、レスポンデント条件づけのポイントを再掲して終わりにしようと思います。

レスポンデント条件づけのポイント
  • 対象となる行動がレスポンデント行動であること
  • その行動が先行する刺激によって誘発されるようになること
  • 先行する刺激はもともとその行動を誘発するものではなかったこと