行動分析学-行動の科学的理解をめざして

行動分析学はとても役立つ学問だと思っていますが、普及という意味ではまだまだだなと感じています。行動分析学の考え方は少し変わっているので、とっつきにくく、誤解されやすいのが原因の1つかもしれません。

心理学の歴史は、科学であろうとしてきた歴史でもあります。目に見えない「心理」あるいは「心」というものを、科学的に理解することが目的の1つと言えます。

その方法として、統計学を駆使するという方向性があります。これが主な心理学が採用している方法論だと思います。

一方、行動分析学は個人(個体)の行動に注目して、その行動の原因は何か、その行動を変えるにはどうしたらいいかということに興味を持っています。行動の「予測と制御(影響)」に関心があるというわけです。

人を含む動物の行動に関係する人にとって、行動分析学の知識はとても役に立つと思います。そのためには、きちんと学び、きちんと理解することが重要です。

行動分析学を学ぶための本として、『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』が役に立つと思います。著者は坂上孝之先生、井上正彦先生です。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』の目次

まずは目次を見てみましょう。

第1章 心とは何か
第2章 観察法と実験法
第3章 生得性行動
第4章 レスポンデント
第5章 オペラント
第6章 強化随伴性
第7章 刺激性制御
第8章 反応遮断化理論と選択行動
第9章 言語行動と文化随伴性

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』

「心とは何か」から始まるところが、心理学の概論書のようで面白いですね。そこには、行動分析学が心をどう見ているのかということが書かれています。

行動分析学は実験から応用まで連続しているので、第2章の「観察法と実験法」というのはとても重要な視点となります。めんどくさい内容かもしれませんが、行動分析学の全体像を理解するためには必要な内容ですね。

第3章からは行動に焦点を当てた展開となっています。最終章である第9章には言語行動があり、ここを理解するためにはその前のところを理解している必要があると思います。

僕は言語行動を理解するのに苦労しましたが、ここがわかってきて、行動分析学の魅力が一気に高まりました。なかなか楽しい部分ですが、なかなか難しいところです。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』 の内容

こんな構成になっている『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』ですが、「HOW TO USE」に次のように書かれています。

本書は大学の授業半期分(90分×15回)で行動分析学の基本的考え方とそれを用いた応用とを学べるように構成されている。(p.iv)

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』

大学の授業で使われることも想定して書かれているので、行動分析学の入門書として使えそうですが、そうとも言えないのが実際のところだと思います。

確かに大学での講義で教科書として使うには適していると思います。丁寧な解説があって、基本的なところから最新のところまで網羅されています。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』の表紙にはそのことが書かれています。

行動の真の理解に向けて、理論と実践の双方向から体系的に環境と行動の働きを解説する。コンパクトなサイズに古典的知見から最新の研究まで網羅した、標準的テキスト。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』

ただ網羅しているせいか、全く知識がない状態で読むと理解が難しいような気がします。

独学で行動分析学を学ぼうと思っている人が『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』を最初に手に取ると、途中で挫折してしまうんじゃないかなと思います。

根気よく読み込める人であればいいかもしれませんが、難しすぎると投げ出したくなるなら、別の本で行動分析学を学ぶことをオススメします。

そうは言っても、『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』は行動分析学を丁寧に説明しているので、素晴らしい本であることは間違いありません。

行動分析学はB.F.スキナーが創始しましたが、行動分析学が成立する以前の研究からの流れがあります。わかりやすいところで言えば、「パヴロフの犬」で有名な古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)ですね。レスポンデント条件づけは、刺激と刺激の関係を扱った条件づけです。

一方、スキナーが体系化したオペラント条件づけもあります。こちらは反応と刺激の関係を扱っています。拡張すれば「刺激-反応-刺激」の三項随伴性になります。そこでは、「先行事象-行動-結果」と呼ばれます。

さらに、反応と反応の関係を扱った反応遮断化理論というものも『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』では紹介されています。これはプレマックの原理からの流れです。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』の最後の方では言語行動や文化随伴性が扱われています。言語行動は理解が難しいものだと思うので、ここでつまずく人も少なくないかもしれません。

言語行動との関係でルール支配行動も説明され、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)も登場していますが、臨床行動分析や関係フレーム理論が出てこなかったのが残念なところです。

『行動分析学-行動の科学的理解をめざして』に書かれているすべてのことに言えると思いますが、より詳しい内容は別の文献にあたる必要はあります。教科書というのは基本的にそういうものですからね。

でも、網羅性という意味では『行動分析学』は素晴らしいと思います。行動分析学に関する本を1冊しか読めないとしたら、この本を選ぶかもしれません。そのくらい素晴らしい本だと思っています。