「強化」を知って行動を増やそう

児童・生徒に「こう振る舞ってほしい」、「こう行動してほしい」と思ったことはありませんか?

例えば、「発言するときは挙手をして、当てられてから答えるようになってもらいたい」、「廊下を歩いて移動してほしい」などです。

今は少ない行動をどうしたら増やせるだろうか?

そのような困り事、悩み事を解決するために、行動分析学の「強化」が役に立ちます。

強化」がどのようなものなのかを知ることができれば、児童・生徒に望ましい行動をしてもらうことが可能になります。

強化とは?

行動分析学で重要なものの1つにオペラント条件づけがあります。行動分析学を使って児童・生徒の行動を変えようとしたとき、オペラント条件づけを使うことがほとんどです。

オペラント条件づけは、結果によって制御される行動の学習のことです。詳しくは、「行動分析学におけるオペラント条件づけとは?」で説明しています。

そのオペラント条件づけでは、行動が増減する4つのメカニズムが明らかになっています。行動が増える2つのメカニズムと、行動が減る2つのメカニズムです。

行動分析学における「強化」は、行動が増えるメカニズムと関係があります。

『行動の基礎-豊かな人間理解のために』では、「強化」は次のように定義されています。

「強化」は行動を増加させる行動随伴性(p.115)

『行動の基礎-豊かな人間理解のために』

行動分析学において「強化」とは、単純に行動が増えることを指しています。それ以外の意味はありません。

例えば、児童・生徒が廊下を歩いて移動することが増えたとしましょう。このとき、「廊下を歩いて移動する行動が強化された」と表現します。

これを一般的な言葉で言い換えると、「廊下を歩いて移動する行動が増えた」となります。

強化の種類

強化には2つの種類があります。これは行動が増える2つのメカニズムのことです。

オペラント条件づけは結果によって制御された行動の学習なので、行動の結果に注目します。行動の結果は、「何かが付け加わる」か、「何かが取り除かれる」かの2通りになります。

この2通りの結果が、強化の種類になります。それぞれ、「正の強化(提示型強化)」、「負の強化(除去型強化)」と呼びます。

「正の強化(提示型強化)」:何かが付け加わって行動が増える

正の強化(提示型強化)は、行動の直後に何かが付け加わることで行動が増えることを指します。

例えば、自動販売機でボタンを押す行動は正の強化(提示型強化)によるものです。ボタンを押すことで飲み物が「付け加わる(出てくる)」からです。

「付け加わる」ものは、一般的に「良い」とされるものだと勘違いされますが、良いかどうかは関係がありません。単純に、何かが付け加わって行動が増えたとしたら、それは正の強化(提示型強化」ということです。

もし、怒ってもおしゃべりをやめない児童・生徒がいたとしたら、「先生から怒られる」という結果事象が付け加わることで、おしゃべり行動が維持されている可能性があります。

このように、正の強化(提示型強化)は何かが付け加わって行動が増えることを意味しています。

「負の強化(除去型強化)」:何かが取り除かれて行動が増える

行動が増えるもう1つの「強化」は、「負の強化(除去型強化)」と呼ばれるものです。

負の強化(除去型強化)は、行動の直後に何かが取り除かれることで行動が増えることを指します。

怒られているときに謝るようになるのは、多くの場合、負の強化(除去型強化)による行動形成と考えられます。

なぜなら、怒られているときに謝れば、怒られることがなくなるからです。それは「怒られること」が「取り除かれる」ことを意味します。

負の強化(除去型強化)は回避行動でもあるので、使用する際には注意が必要です。

強化の種類まとめ

行動分析学における「強化」には2つの種類があります。

1つは、正の強化(提示型強化)と呼ばれるもので、行動の直後に何かが付け加わることで行動が増えることを指します。

もう1つは、負の強化(除去型強化)と呼ばれ、行動の直後に何かが取り除かれることで行動が増えることを指します。

行動が増減するメカニズムについて詳しく知りたい人は、「行動が増減する4つのメカニズムを知れば行動を変えられる!」をご覧ください。

児童・生徒の行動を増やす

行動を増やすことを考えたとき、正の強化(提示型強化)と負の強化(除去型強化)の2つのメカニズムを利用することができます。

優先されるのは正の強化(提示型強化)です。

例えば、 「発言するときは挙手をして、当てられてから答えるようになってもらいたい」 とします。

このとき、どうすれば正の強化(提示型強化)になるでしょうか?

小学校低学年の場合、「発言するときに挙手をして、当てられてから答える」行動が生起したときに、褒めることが効果的である可能性があります。

あるいは、単純に、発言するときに挙手をして当てられてから答えたときだけ先生が反応する(意見を取り入れるなど)ことでもいいかもしれません。

廊下を歩いて移動してほしいときも同じような考え方で、褒めることが効果的と考えられます。

ただ、小学校高学年になると褒めることの効果が薄れてくることもあるので、別の形で正の強化(提示型強化)を実現する必要があります。

負の強化(除去型強化)の利用は、事前に嫌悪的な状況に置かなければいけないので、倫理上の問題を考える必要があります。

児童・生徒の行動を増やす場合は、その前に機能分析/ABC分析を行うことになります。

最後に

行動分析学における「強化」は行動が増えることを意味しています。その強化には、正の強化(提示型強化)と負の強化(除去型強化)があります。

基本的には正の強化(提示型強化)を使うことを考え、どうしても正の強化(提示型強化)では行動を変えられない場合に、負の強化(除去型強化)の使用を考えることをオススメします。

この「強化」というものを理解することは、今までは理解不能だった児童・生徒の行動を理解することに繋がります。

児童・生徒が何らかの行動を繰り返しているとしたら、それは何らかの形で強化されているからです。

その行動の直後にどうなるかをよく観察することで、その行動が何によって制御されているのかを知ることができます。

ポイントは「何かが付け加わっている」のか、「何かが取り除かれている」のか、という視点で見ることです。

さらに、「弱化」と呼ばれるものを理解することで、より正確な行動の分析が可能になり、児童・生徒の行動を変えるときに使える方法を増やすことができます。

「弱化」については、「弱化を知って行動を減らそう。でも、使用には注意が必要」で説明しています。

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