行動が増減する4つのメカニズムを知れば行動を変えられる!

児童・生徒の行動で困っていませんか? 「いたずらばっかりして困る」、「授業中の立ち歩きをやめさせたい」、「もっと勉強に取り組ませたい」。

たくさんの工夫や努力をしてきたのに児童・生徒の行動が変わらず、お手上げ状態になっていませんか?

その困り事は、行動が増減するメカニズムを知れば解決できます。

行動が増減するメカニズムはたったの4つ。それさえわかれば、今すぐにでも児童・生徒の行動を変えられるようになります。

行動が増減するメカニズム

ある児童・生徒は勉強する行動が増えていき、ある児童・生徒は授業中に手遊びをする行動が増えていくのには、理由があります。

「やる気がある」、「やる気がない」という理由ではありません。そこには、行動が増減するメカニズムが働いているからです。

児童・生徒の行動を分析して、そこに働いているメカニズムを見つけ出すことができれば、児童・生徒の行動を変えることができます。

行動を分析する

何かを分析しようと思ったら、分析方法を知っている必要があります。「行動」に関しては、「心」を使った分析が多く使われていますが、あまり有効ではありません。

多く使われている方法が有効なのであれば、児童・生徒の行動が変わらずに困ることは激減しているはずですからね。

では、行動はどのように分析すればいいのでしょうか?

行動を分析することに特化した学問があります。それが行動分析学です。行動分析学は、行動の予測と制御を目的とした学問なので、児童・生徒の行動を変えたいと思っている先生にはぴったりのものです。

行動分析学におけるオペラント条件づけ」にも書いたように、行動は結果によって制御されています。

行動の結果を見ることで、行動を分析できるのです。

行動が増えるメカニズム

行動の結果に注目して、どのような結果のときに行動が増えるのかということは、多くの研究によって明らかになっています。行動の原理です。

行動の結果には2つあります。それは、「何かが付け加わる」結果と、「何かが取り除かれる」結果です。

問題を解いて丸をもらえたとしたら、それは「何かが付け加わる」結果です。それまでなかった「丸」が、問題を解くこと(行動)で「付け加わった」からです。

逆に、立ち歩くことで課題をやらなくてすんだとしたら、それは「何かが取り除かれる」結果です。それまであった「課題」が、立ち歩くこと(行動)で「取り除かれた」からです。

この2つの例は、どちらも行動が増えるメカニズムを説明したものです。

何かが付け加わることで行動が増える

行動が増えるメカニズムの1つ目は、「何かが付け加わることで行動が増える」です。

このメカニズムはよく、「良いことがあると行動が増える」のような説明がなされます。「丸をもらえる」という良いことがあったから、問題を解く行動が増えた、という考え方です。

この説明の方がわかりやすいのですが、正確には「何かが付け加わると行動が増える」です。ただ、最初のうちは、「良いことがあると行動が増える」と覚えておいてもいいでしょう。

重要なポイントは、行動は結果によって制御されていると理解することです。

何かが取り除かれることで行動が増える

行動が増えるメカニズムの2つ目は、「何かが取り除かれることで行動が増える」です。

このメカニズムは、「嫌なことがなくなると行動が増える」のように説明されます。「課題」という嫌なことがなくなったから、立ち歩きが増えた、という考え方です。

もう少し詳しく説明します。

勉強嫌いの児童・生徒にとって、授業中にやる課題は嫌なものですよね。どうにかして逃げ出したいわけです。

授業中に立ち歩けば、課題をやらなくて済みます。つまり、立ち歩き行動の結果、課題が目の前からなくなる(取り除かれる)ということです。

このように「嫌なことがなくなると行動が増える」と理解してもいいのですが、正確には「何かが取り除かれることで行動が増える」なので、頭の片隅に入れておきましょう。

行動が減るメカニズム

次に、行動が減るメカニズムを見ていきましょう。

行動が減るメカニズムも、結果に注目することは同じです。そして、こちらも多くの研究によって、その原理が明らかになっています。

行動の結果が2つしかないことを考えると、行動が減るメカニズムがどういうものか、すでに気づいている人もいるかもしれませんね。

あらためて、2つしかない行動の結果を確認しておきましょう。

1つ目は、「何かが取り除かれる」結果です。授業中にねりけしを作っていて取り上げられた場合、ねりけしが「取り除かれる」結果ということになります。

2つ目は、「何かが付け加わる」結果です。いたずらをして怒られた場合、「怒られる」結果が「付け加わった」と理解します。

何かが取り除かれることで行動が減る

行動が減るメカニズムの1つ目は、「何かが取り除かれることで行動が減る」です。

このメカニズムは、「良いことがなくなると行動が減る」と説明されることがあります。

ねりけしを取り上げられて、授業中にねりけし作りが減ったとしたら、この「何かが取り除かれることで行動が減る」に当てはまります。ねりけしが取り除かれて、ねりけし作り(行動)が減ったからです。

このメカニズムも、正確には「何かが取り除かれることで行動が減る」ですが、「良いことがなくなると行動が減る」の方が理解しやすいと思います。

何かが付け加わることで行動が減る

行動が減るメカニズムの2つ目は、「何かが付け加わることで行動が減る」です。

いたずらをして怒られたことで、いたずらが減ったとしたら、このメカニズムが働いたことになります。怒られるという結果が付け加わって、いたずら行動が減ったからです。

このメカニズムは、「嫌なことがあると行動が減る」と説明されることがありますが、正確には「何かが付け加わることで行動が減る」です。

行動が増減するメカニズムが働く条件

行動が増減するメカニズムは、これまで見てきた4つです。まとめると、次のようになります。

  1. 何かが付け加わることで、その行動が増える
  2. 何かが取り除かれることで、その行動が増える
  3. 何かが取り除かれることで、その行動が減る
  4. 何かが付け加わることで、その行動が減る

ここには重要な条件が入っていません。その条件に当てはまるときに、行動が増減するメカニズムが働きます。

その条件は、「行動の直後にある結果」というものです。

これが重要なポイントで、いたずらをした直後に怒れば効果がありますが、数日経っていると怒ってもあまり意味がないことを意味しています。

ここで言う直後は、『行動分析学入門』(産業図書)の中で次のように説明されています。

直後とは60秒以内のことである(p.17)

『行動分析学入門』(産業図書)

この条件を加えると、行動が増減するメカニズムは次のようにまとめられます。

  1. 行動の直後に何かが付け加わることで、その行動が増える
  2. 行動の直後に何かが取り除かれることで、その行動が増える
  3. 行動の直後に何かが取り除かれることで、その行動が減る
  4. 行動の直後に何かが付け加わることで、その行動が減る

行動が増減するメカニズムを使って行動を変える

行動が増減するメカニズムは4つ。その4つを知ることで、児童・生徒がなぜそのような行動をしているのかを理解することができます。

それと同時に、どうしたら行動を変えることができるのかも教えてくれます。

目的は「児童・生徒にその場に適した行動をしてもらうこと」ですよね。そうだとしたら、その場に適した行動を増やせばいいということになります。

行動を増やすためには、2つのメカニズムが使えます。その2つは、「行動の直後に何かが付け加わることで、その行動が増える」と、行動の直後に何かが取り除変えることで、その行動が増える」です。

優先するのは1つ目の「行動の直後に何かが付け加わることで、その行動が増える」というものです。

授業中に課題をやってほしいとしたら、「課題をやっているときに褒める」、「課題ができるように手助けする」などが必要になります。

つまり、増やしたい行動をしているときに、その児童・生徒が「良い」と感じられるような結果を「付け加える」ということです。

行動を減らしたいときも同じで、その行動とは別の行動を増やすことで、対象としている行動が減っていくことを目指します。ねりけし作りを減らすより、課題をやることを増やすことを優先するということです。

このように行動が増減するメカニズムを使うことで、児童・生徒の行動を変えることができます。

実際に児童・生徒の行動を変える前には、機能分析/ABC分析を行うことになります。

最後に

今回は行動が増減するメカニズムを説明しました。

それは「 行動分析学におけるオペラント条件づけ 」でも書いたように、行動の結果に注目することで見えてくるメカニズムです。

このような視点で児童・生徒の行動を見てみると、何が児童・生徒の行動を増減させているのかが見えてきます。

変えたい行動の直後に何が付け加わるのか、何が取り除かれるのか。

どのような行動が増減するメカニズムが働いているかを見つけ、行動が増えるメカニズムを活用することで、児童・生徒の行動を変えていきます。

基本的な考え方はこの記事に泣いた通りですが、さらに効率的に指導・支援をしていくためには、より詳しく行動分析学を理解することをオススメします。

より詳しく行動分析を知りたいと思う人は、「「強化」を知って行動を増やそう」をご覧ください。

早く対応を知りたいという人は、「行動分析学を使って行動を理解し、行動を変える」に進んでください。

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