弱化を知って行動を減らそう。でも、使用には注意が必要

児童・生徒に辞めさせたい行動はありませんか?

例えば、「暴力」、「悪口」、「廊下を走る」、「嘘をつく」などです。

このような行動はどうしたら減らせるのでしょうか?

今回は、行動を減らすために必要な「弱化」について紹介します。

弱化を使えば行動を減らすことができます。ただ、弱化の使用には問題もあるので、その注意点も合わせて知っておきましょう。

弱化とは?

行動分析学を簡単に言えば、「条件づけに関する学問」と表現することもできます。その中の1つに、オペラント条件づけと呼ばれるものがあります。

オペラント条件づけは、結果によって制御される行動の学習です。詳しくは、「行動分析学におけるオペラント条件づけとは?」に書いてあります。

弱化」はオペラント条件づけに関するものです。その中でも、行動が減るメカニズムと関係しています。

『行動の基礎-豊かな人間理解のために】では、「弱化」は次のように定義されています。

「弱化」は行動を減少される行動随伴性である。(p.115)

『行動の基礎-豊かな人間理解のために』

ある行動が減ることを行動分析学では「弱化」と呼んでいます。

児童・生徒の暴力が減った場合、「暴力という行動が弱化された」と表現することになります。

この辺の使い方は「強化」と同じなので、強化とセットで覚えると覚えやすいと思います。

「強化」を知って行動を増やそう

弱化の種類

弱化には2つの種類があります。行動が減るメカニズムが2種類あるので、それが2種類の弱化になります。

正確には、行動が減るメカニズムは弱化以外にもありますが、ここでは弱化についての説明をします。他のメカニズムについては別の機会に紹介します。

結果によって制御された行動の学習であるオペラント条件づけでは、行動の結果に注目します。その結果には、「何かが付け加わる」場合と、「何かが取り除かれる」場合の2通りがあります。

この2通りの結果によって行動が減った場合が、2種類の弱化になります。それぞれ、「正の弱化(提示型弱化)」、「負の弱化(除去型弱化)」と呼びます。

「正の弱化(提示型弱化)」:何かが付け加わって行動が減る

正の弱化(提示型弱化)」は、行動の直後に何かが付け加わることで行動が減ることを指します。

犬に近づいて吠えられてから犬に近づかなくなったというのは正の弱化(提示型弱化)の例です。犬に近づくことで、吠えられることが「付け加わる」からです。

正の弱化(提示型弱化)で付け加わるものは「悪いもの」というわけではなく、何かが付け加わって行動が減った場合、それを正の弱化(提示型弱化)と呼ぶということです。

一般的には嫌悪的なものが付け加わることで直前の行動が減ることが多いと思いますが、定義上は嫌悪的なものである必要がないことを覚えておきましょう。

「負の弱化(除去型弱化)」:何かが取り除かれて行動が減る

負の弱化(除去型弱化)は、行動の直後に何かが取り除かれることで行動が減ることを指します。

おもちゃで遊んでいるときに友達を叩いておもちゃを取り上げられたことで、友達を叩くことが減ったとしたら、それが負の弱化(除去型弱化)です。

それは、おもちゃが「取り除かれる」ことで叩く行動が減ったからです。

もし、おもちゃを取り上げられず、怒られることで友達を叩く行動が減ったとしたら、それは起こられることが「付け加わった」ことになるので、正の弱化(提示型弱化)になります。

弱化の種類まとめ

行動分析学における「弱化」には2つの種類があります。

  1. 正の弱化(提示型弱化):行動の直後に何かが付け加わることで行動が減る
  2. 負の弱化(除去型弱化):行動の直後に何かが取り除かれることで行動が減る

行動の増減のメカニズムを詳しく知りたい人は、「行動が増減する4つのメカニズムを知れば行動を変えられる!」をご覧ください。

弱化の注意点

行動を減らすために弱化は役に立ちますが、その注意点を知った上で使用することが重要です。

『メリットの法則-行動分析学実践編』には、弱化を多用する副作用が6つ書かれています。

  1. 行動自体を減らしてしまう
    叱られないようにするために、何もしないようになる。いわゆる「積極性」が失われやすい。
  2. 何も新しいことを教えたことにならない
    新しい行動は強化と消去の組み合わせによって生まれる。
  3. 一時的に効果があるが持続しない
    回復の原理がある。叱られないと行動しないのであれば、常に叱ってくれる人の存在が必要となる。
  4. 弱化を使う側は罰的な関わりがエスカレートしがちになる
    虐待につながりやすい危険性をはらんでいる。弱化を使う側は「どうして、何度言ってもわからないの!?」と考えがちになる。そして、叩く強さやペナルティーが徐々に増してしまう。
  5. 弱化を受けた側にネガティブな情緒反応を引き起こす
    極度に人を恐れたり、恨んだりすることが起こりやすい。あるいは「自分はだめだ」と思い込んで非活動的になり、いわゆる「自尊心」が傷ついた状態に陥りやすい。
  6. 力関係次第で他人に同じことをしてしまう可能性を高める
    弱化を受けた側が、状況が変わって力関係の強い側に回った場合、力関係の弱い相手に対して同じような罰的な関わりを行ってしまいがちになる。

『メリットの法則-行動分析学実践編』

これらの副作用は、教育の目標と相容れないものだと思います。

積極性を失わせ、自尊心を傷つけ、一時的な効果しかないような方法を使って行動を減らし、結果として何も教えたことになっていないのが教育だとは言えませんよね。

自分より弱い相手に対して罰的に関わるようになる児童・生徒になってほしいと望んでいる先生はほとんどいないはずです。

『メリットの法則-行動分析学実践編』に書かれている副作用とは正反対の効果を教育は求めていると思います。ということは、基本的には弱化を使わないようにする必要があるということです。

このような注意点を理解した上で、必要に応じて弱化を使うことはとても役に立ちます。

児童・生徒の行動を減らす

大前提として、弱化は罰的なものであるため、その使用は最小限にする必要があります。

使用するとしても、可能な限り嫌悪的でない方法で使用するべきです。というより、そうしなくてはいけません。

実際に児童・生徒の行動を減らす場合は、その前に機能分析/ABC分析を行うことになります。

行動を減らすために最初は強化を使う

児童・生徒の行動を減らしたい場合、最初に使うのは強化です。それも正の強化(提示型強化)を使用します。

例えば、ある児童・生徒がクラスメイトから悪口を言われて暴力を振るっているとします。その暴力を減らすためには、その児童・生徒が別の方法で同じ結果を得られるようにすることが優先されます。

暴力によってクラスメイトからの悪口がなくなったとしたら、その暴力は負の強化(除去型強化)によって維持されています。

もし暴力以外の方法でより効果的に悪口を止めることができたとしたら、結果として暴力が減ることになります。例えば、その場から離れたり、「やめて!」と言ったり、先生に助けを求めたりという行動が増えることで、暴力が減るかもしれません。

弱化の使用の検討

減らしたい行動以外の行動を増やすことで、減らしたい行動を減らすことができなかった場合、弱化の使用を検討します。

そのとき、可能な限り嫌悪的ではない方法を使う必要があります。そのため、弱化を検討する順番としては次のようになります。

  1. 負の弱化(除去型弱化)
  2. 正の弱化(提示型弱化)

弱化を使って行動を減らす

強化によって行動を変えることができず、弱化の使用を検討した上で、弱化を使って行動を減らす手続きに入ります。

比較的影響が少ない弱化の例としては、学習において間違ったことを伝えるときの「ブブー」や「不正解」などがあります。

これによって間違う行動が減ったとしたら、それは正の弱化(提示型弱化)になります。

このような弱化にしようであれば大きな問題にはなりませんが、より嫌悪的な方法を使う場合はその方法を使用することに対する説明責任が問われることになります。

例えば、暴力を減らすために大声で怒るとします。それは児童・生徒にとって嫌悪的であり、恐怖を感じることもあるでしょう。

もしそれによって児童・生徒が「怖くて学校に行けない」となってしまった場合、怒った先生の責任が問われる可能性があります。

暴力自体を減らすことができたとしても、他のことへの影響が強く出る可能性があるのが弱化なんです。だからこそ、その使用には慎重にならなくてはいけません。

そして、その方法以外に方法がなかったことを説明できるようにしておく必要があります。

また、弱化は基本的に何も教えたことにならないため、暴力以外でその状況に対処する方法を教える必要もあります。

最後に

行動分析学における「弱化」は行動が減ることを指しています。その弱化には、「正の弱化(提示型弱化)」と「負の弱化(除去型弱化」があります。

弱化には副作用があるため、その使用について慎重に検討する必要があります。強化による行動変容を試し、他の方法がない場合に弱化の使用が検討されることになります。

「弱化」という視点で児童・生徒への対応を見直したとき、弱化が多用されていることに気づくと思います。本来であれば強化で対応可能なことであっても、弱化を使うことで問題を大きく、そして複雑にしていることもあります。

弱化自体は行動が減るメカニズムなので悪いものではありません。でも、その使用については副作用を意識しながら使っていく必要があります。

また、強化と同じように、「何かが付け加わっている」のか、「何かが取り除かれている」のか、という視点で見ることで、児童・生徒の行動の理解だけでなく、行動を変えることに役立てることができます。

「強化」については、「「強化」を知って行動を増やそう」で説明してあります。

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