先生のための行動分析学

児童・生徒の振る舞いを変えようとして手を尽くしているのに、児童・生徒が変わらずにお手上げ状態になっていませんか?

変わらないならまだいい方で、悪い方向に進んでいってしまっていることもあると思います。

学校の中で相談しながら指導・支援を行っているのにうまくいかないケースもたくさんあるでしょう。もしかしたら、スクールカウンセラーのアドバイスも役に立たなかったかもしれません。

そのような難しいケースでも、自分で状況を分析して、的確な指導・支援が行えるようになったとしたら、どうでしょうか?

同じ枠組みでほとんどのケースを分析して、その場に応じた対応ができるとしたら、どうなるでしょうか?

難しいケースでも対応が可能になる方法論の1つとして行動分析学があります。

行動分析学の知識を学ぶことで、今までの指導・支援を振り返ることができ、新たな視点からより効果的な指導・支援を組み立てることができるようになります。

行動分析学とは?

行動分析学は、B.F.スキナーが創始した学問領域です。心理学の一分野に位置づけられていますが、行動科学と見ることもできると思います。

その名の通り、行動分析学は「行動」を「分析」する学問です。

全く同じものとは言えませんが、学習心理学といえば聞いたことのある先生は多いと思います。ここでは、学習心理学をイメージしてもらうのが、一番わかりやすいと思います。

行動分析学の詳しい内容に入る前に、行動分析学の目的を紹介します。

行動分析学の目的

行動分析学の目的は、おそらく先生にとって魅力的なものになるかもしれません。その目的について、『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ-言語行動理論・ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)入門』には次のように書かれています。

(前略)「行動分析」は、ひとつの科学的体系(行動分析学)を指すことになる。行動の「予測と制御」を目的とし、それを実行するための実践的な取り組みも含めた科学全体を指している。(p.5)

『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ-言語行動理論・ACT入門 』

行動分析学の目的は、行動の予測と制御です。予測と影響という言い方をする場合もあります。

行動の予測と制御を目的として発展してきているため、行動分析学には行動を制御する方法、つまり行動を変える方法がたくさんあります。

普段の教育活動で、「どうしたらいいかわからない」と思っていることの中に、行動分析学ではすでに解決済みのことがたくさんあります。

その方法を知らないから使えないだけで、その方法を理解して、使い方を知ることで、今までの困りごとが一気に解消する可能性もあります。

行動分析学の基本

行動分析学で基本となるものの1つにオペラント条件づけがあります。このオペラント条件づけを理解するだけで、見える世界が変わるかもしれません。

オペラント条件づけは、『臨床行動分析のABC』で次のように説明されています。

オペラント条件づけは道具的行動の学習として定義されます。つまり、結果(C)によって制御される行動の学習ということです。(p.124)

『臨床行動分析のABC』

一般的に行動はその前にあるものによって制御されていると考えられています。それは、行動の原因をどのように説明するかを見ればわかります。

例えば、名前を呼ばれて返事をしたとしましょう。

このとき、「なぜ返事をしたのか?」と聞かれれば、ほとんどの人は「名前を呼ばれたから」と答えます。当たり前ですね。

でも、行動分析学におけるオペラント条件づけでは、返事をする行動が「結果」の制御を受けていると考えます。

それは、「返事をする行動を増やす・維持する結果があったから、返事をした」と説明できるかもしれません。

この発想は、なぜ褒めるといいのかということについての答えも提供してくれます。

行動分析学におけるオペラント条件づけについては、「行動分析学におけるオペラント条件づけとは?」で説明しています。

行動分析学は学習にも使える

行動分析学は長い時間をかけて発展を遂げてきています。その中で、学習にも使えるものが当時しています。

学習内容をどうすれば理解できるのかという疑問に答えを提供してくれます。

一般的に、行動分析学が教育で使われるとき、生活指導・生徒指導や特別支援教育が主なターゲットになっています。

それらだけで終わらせてしまうのはとてももったいないことです。実は、行動分析学が発展していく中で、関係フレーム理論という理論が出てきました。

その関係フレーム理論を使えば、学習効果を高めるような対応を考え出すことも可能になります。

そこでは、オペラント条件づけを基礎として発達する「関係フレームづけ」と呼ばれるものが重視されています。

『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ-言語行動理論・ACT入門 』 には、次のように書かれています。

関係フレームづけが関連すると考えられる多様な分野は、教育、心理的発達、特定の言語的困難のある子どもたちの訓練、言語学の研究、政治、社会的プロセス、実存的問題、そして個人の心理的問題などである。

『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ-言語行動理論・ACT入門 』

はっきりと「教育」という文字が書かれていますね。

行動分析学という枠組みを使うだけで、生活指導・生徒指導、特別支援教育、学習という複数の教育活動に応用できるということです。

先生のための行動分析学

たとえば、困っているときに「困っている」と言えない児童・生徒、暴力をふるう児童・生徒、クラスメイトにちょっかいを出してトラブルを起こすことが多い児童・生徒、ノートを取らない児童・生徒、授業中に騒ぐ児童・生徒。

このような児童・生徒の行動を行動分析学を用いて変えることができます。

このブログでは、「先生のための行動分析学」として、行動分析学をわかりやすく、役に立つように紹介していきます。

「先生のための行動分析学」を順番に読んでいけば、行動分析学がどのようなものであるかがわかるようになります。そして、それを教育活動で使うことができるようになります。

隠れた効果として、スクールカウンセラーなどの心理職から納得できない説明やアドバイスがあったとき、自信を持って、しかも理論に基づいて、自分の意見を言えるようになるというおまけもあります。

より良い指導・支援を行うために、行動分析学を学んでいきましょう。

まずは、オペラント条件づけを学ぶために、『行動分析学におけるオペラント条件づけとは?」に進みましょう。

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