行動分析学では行動の後に何があるかがが重要なら、なぜ行動の前のことも見る必要があるのでしょうか?
今回はそんな疑問にお答えします。
行動分析学で重要なオペラント条件づけは、結果によって制御される行動の学習です。だからと言って、行動の前にある「先行事象」は関係ないわけではありません。
関係がなかったらわざわざ「先行事象」と名前を付けてまで分析するときに活用したりしませんからね。
結論から言うと、行動の直前にある「先行事象」は、行動が生起するかどうかと関係があります。
それでは、先行事象を変えて行動を生起しやすくすることについて見ていきましょう。
行動分析学における分析の枠組み
行動分析学ではオペラント条件づけが重要なものの1つとなっています。そのオペラント条件づけは、結果によって制御される行動の学習です。
どのような結果があるかによって、行動が増えるのか、減るのかが決まるというのが、オペラント条件づけです。
重要なのは行動の直後の結果ですが、行動の直前にあるものを重要な役割を果たします。行動の直前にあるもの(先行事象)が今回のテーマです。
今回のテーマに入る前に、行動分析学の基本的な分析の枠組みを確認しましょう。
行動の直後の結果は、将来の行動が増えるか減るかに関係しています。結果を変えることによって、行動を増やしたり、減らしたりできるということです。
今回は行動の直前にある「先行事象」がメインテーマです。
先行事象とは?
先行事象は、その名の通り、行動に先行する事象のことです。
オペラント条件づけは単なる「結果によって制御される行動の学習」ではなく、「先行事象-行動-結果」の連鎖を学習するというものです。
つまり、「ある事象の下で、ある行動をすることで、ある結果が生じる」ことを学習するんです。
見方を変えると、その「ある事象」がなければ、「ある行動」は生起しないということでもあります。
その先行事象があるときには行動が生起し、先行事象がないときには行動が生起しないという意味で、「弁別刺激」と呼ばれることがあります。
『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ-言語行動理論・ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)入門』には、弁別刺激について次のように書かれています。
弁別刺激が合図として教えてくれるのは、ある行動と特定の結果との間にある今までの「つながり」(connection)である。(p.23)
『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』
つまり、ある行動がある結果に繋がっているかどうかを弁別するための刺激が、弁別刺激ということです。
例えば、難しい課題があるときに、おしゃべりをすると、周囲からの反応があるとします。
このとき、「難しい課題」という先行事象は、「おしゃべり」という行動と「周囲の反応」という結果が繋がっていることを合図しています。
おそらく難しい課題でなかったとしてもおしゃべりをすれば周囲の反応があると思いますが、重要なのはそこではありません。
その児童・生徒は「難しい課題」がある状況下で、「おしゃべり」をして「周囲の反応」という結果を経験しているということが重要なんです。その経験によって、「難しい課題」は、「おしゃべり」と「周囲の反応」のつながりを示すものとなっているんです。
先行事象は一般的に「行動の原因」とされますが、行動分析学においては「行動と結果のつながりを合図する」という機能を持ったものとされています。
先行事象は機能分析/ABC分析でも重要なものなので、しっかりと理解しておくことをオススメします。
最後に
行動分析学では行動の直後の結果を重視しますが、その行動と結果のつながりを合図するものとして先行事象(弁別刺激)が重要な役割を果たします。
この先行事象は一般的に「行動の原因」とされますが、行動分析学では「行動と結果のつながりを合図するもの」として扱われます。
「先行事象-行動-結果」の連鎖を見ていくというのは、この3つのつながりによって行動を理解していくということを意味します。
直後の結果が重要なのは言うまでもありませんが、先行事象を分析に加えることで、行動分析学はより役立つものになります。
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