「ポジティブ心理学の健康領域への貢献」- 喪失のディストレス状態を緩和するものは何?

ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』には、ポジティビティが健康に影響を与えているというような内容が出てきます。

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』の第13章は「ポジティブ心理学の健康領域への貢献」というタイトルが付けられていて、ポジティブな状態とかが健康にどのように影響しているかが書かれています。

なぜポジティブ心理学に興味を持ったのか? それはACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と関係していた!?」でも紹介した、セリグマンのTEDでのスピーチに出てきた3種類の幸せな生き方に繋がりそうな内容も出てきて、ワクワク感が高まっています。

  • 楽しい人生
  • 夢中になる人生
  • 意味のある人生

これがセリグマンのスピーチで出てきた幸せな生き方です。ポジティブ心理学に興味を持った理由の1つがこの辺のところだったので、やっとたどり着いたという感じがあります。

「ポジティブ心理学の健康領域への貢献」にはいくつかの研究が紹介されていますが、そのうちの1つを紹介したいと思います。

それがこの記事のタイトルにも入れた、喪失のディストレス状態の緩和に関する研究です。 ディストレス状態の緩和に、幸せな生き方の1つが関係しているのかもしれません。 それでは、ディストレス状態の緩和について見ていきましょう。

家族の喪失に対する積極的対処

心理職として働いていく中で避けることができないものの1つが、家族の喪失に関するものだと思います。

長期間の心理療法・カウンセリングをしていれば、クライエントが家族の喪失を経験する可能性が高くなるので、家族の喪失に関する知識は必要です。

ポジティブ心理学では、家族の喪失に対する積極的対処に関する研究があります。『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』から引用してみましょう。

ディビスら(Davis et al., 1998)は、末期患者の家族に対する前向き研究で、家族の喪失に対する積極的対処として、「意味の生成」と「利得の発見」という2つの意味づけ次元があり、それらは独立的に喪失からの再適応過程に寄与することを指摘する。(p.219)

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』

※Davis, C. G., Nolen-Hoeksema, S., & Larson, J. 1998 Making sense of loss and benefiting from the experience : Two constructs of meaning. Journal of Personality and Social Psychology, 75, 561-574.

「意味の生成」はいいとして、この文脈で「利得の発見」というと何となく嫌な響きがありますね。それぞれの具体的な対処の例は書かれていないので、変な誤解をしてそうな気はしますが。

この「意味の生成」が、セリグマンのTEDでのスピーチでできた「意味のある人生」と関係しているような気がします。その辺について何の記述もないのでわかりませんが、勝手に関係していると思っています。

「意味の生成」と「利得の発見」については、具体例はなくても、その意味についての解説が付いています。

意味の生成とは目の前に起きていることを個人の持つ宗教観や健康知識、あるいは病気への因果性に関する「適応シェマ」に統合し、理解するための説明・解釈である。(p.219)

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』

このように書かれるとわかったようなわからないような感じがしますが、おそらく「その現象に意味を見出す」という感じなのかなと思っています。

適応シェマに統合するということもポイントですね。

次に利得の発見を見てみましょう。

利得の発見とはネガティブな出来事の中に明るい兆しや肯定的な意味を見つけ、これから出会う事態への前向きな対処である。(p.219-220)

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』

何となく弁証法的行動療法(DBT)の承認で言われていることを連想してしまいました。DBTに関してはまた別の機会で取り上げるかもしれません。

家族の喪失というのはネガティブな出来事ですが、その中にある明るい兆しや肯定的な意味を見出すというのが利得の発見ということですね。ネガティブな中にポジティブを見つけるという感じでしょうか。

この「意味の生成」と「利得の発見」がディストレス状態を緩和することについて、次のように書かれています。

ディビスらの結果は、喪失1年以内の初期過程では「意味の生成」が悲嘆などのディストレス状態を緩和するが、13ヶ月と18ヶ月の時点では「利得の発見」の方がディストレスの緩和に強く関連していることを示している。(p.220)

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』

最初は家族の喪失に意味を見出すことがディストレス状態の緩和に役に立ち、それ以上では(研究では13ヶ月と18ヶ月)「利得の発見」の方が強く関連しているというのは、何となく理解できますね。

喪失を受け入れるためにはそこに意味を見出すことが必要であり、意味があることだからこそ喪失を受け入れられるということなのでしょう。

そして、残された者の人生はそれでも続いていきます。その人生を生きていくには、喪失に意味を見出すだけでなく、そこから先に進んでいく必要があります。そのために「利得の発見」が役に立つということですね。

第13章「ポジティブ心理学の健康領域への貢献」の結論

今回紹介したのは「ポジティブ心理学の健康領域への貢献」というタイトルが付いた第13章の一部です。健康領域への貢献なのですが、ここで取り上げたのは健康領域っぽくなかったですね。

この章には他にも興味深い研究が紹介されています。そして、最後の結論として次のようにまとめられています。

以上みてきたように、ソーシャルサポート、ポジティブな感情体験、自己と環境との関係についての積極的な意味づけ、積極的対処などの心理社会的因子が病気の予防や健康増進、あるいは病気進行の抑制といった疾病課程の影響する可能性を示唆している(p.220)

『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』

より良い人生ということを考えたとき、健康はとても重要なものです。ストレスが病気に関係していることがわかっているので、上で紹介した喪失のディストレス状態の緩和についても間接的に健康と関連していると言えるでしょう。

健康増進や病気の予防には生活習慣や検診などが影響するのは当たり前ですが、そこに心理社会的因子も影響しているというのは興味深いところですね。

まとめ

ポジティブ心理学に興味を持ったのは、より良い人生を送るために必要なことがわかるかもしれないという好奇心があったからです。ネガティブなものを減らすことも大事ですが、ポジティブなことを増やしていくことも大事ですからね。

そういう興味があって『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』を読んでいたのですが、ここにきてやっと知りたいことに近づいてきたという感じがります。

それと同時に、この1冊だけでは十分ではないということ、ポジティブ心理学にはいくつもの領域というかテーマがあるので、それぞれを詳しく知っていく必要があることなどを感じています。

今回は紹介しませんでしたが、第13章にはソーシャルサポートやポジティブな感情体験などについても書かれています。それぞれ興味深い研究が紹介されていて、なかなか面白い章でした。

残念ながら『ポジティブ心理学-21世紀の心理学の可能性』は第16章までなので、この辺を掘り下げるためには別の本や研究をあたるしかなさそうです。ポジティブ心理学の概要を知るために買った本なので、仕方ないですね。

正直言うと、ポジティブ心理学の中でもあまり興味がないところもあるので、興味のあるところについて知識を入れていこうかなと考えています。

特に、セリグマンのTEDでのスピーチにある幸せな生き方に関係するところはもっと知りたいと思っています。